一般的に洗顔は「ぬるま湯(30℃~35℃ぐらい)がいい」とされています。
ぬるま湯がいいと言われているのは、次のような理由からです。
- 冷たい水だと汚れ落ちが悪い。
- 水温が高いと皮脂が必要以上に落ちてしまう。
はたして本当でしょうか?これについて考えてみます。
泡洗顔と水洗顔
石鹸や洗顔料を使うか、水だけで洗顔するかで、汚れの落ち方のメカニズムが大きく異なります。
そのため、石鹸や洗顔料などを使う場合を「泡洗顔」、水だけで洗顔する場合を「水洗顔」として分けて考えます。
泡洗顔の場合
ぬるま湯でも皮脂はほとんど落ちる
洗剤には「油を包んで水に溶かす」という性質があります。
石鹸や洗顔料は洗剤で、皮脂は油です。石鹸や洗顔料を使うと、皮脂は簡単に落ちてしまいます。
ぬるま湯であっても皮脂はほとんど落ちてしまうので、泡洗顔の場合は皮脂の落ち具合を気にしていても仕方ありません。
気にするべきは「角質細胞間脂質」
泡洗顔で落ちるのは皮脂だけではありません。
皮脂の下にある「角質細胞間脂質」まで落としてしまう懸念があります。
角質細胞間脂質は角質層の中にある脂質で、皮脂よりも肌の潤いを保つのに大きな役割を担っています。
皮脂は数十分である程度回復しますが、角質細胞間脂質は回復するまで何日もかかります。
泡洗顔をする場合は皮脂ではなく、角質細胞間脂質が落ちないかを気にした方がいいのです。
水温を上げると洗浄力が上がる
洗剤には「水温を上げると洗浄力が上がる」という性質もあります。
ただでさえ、石鹸や洗顔料の洗浄力は強力です。
水温を上げるとその洗浄力がさらに強化されるわけですから、角質細胞間脂質が落ちるリスクがより高まります。
そのため、泡洗顔を行う場合は水温に気を付けた方がよく、温かいお湯よりもぬるま湯の方がいいと言えるでしょう。
水洗顔の場合
水温を上げると皮脂は落ちやすくなる
そもそも、皮脂は水にほとんど溶けません。
なぜ水だけでも皮脂が落ちるのかというと、肌を擦ったり、水流を当てたりするためです。
このような行動を加えることで、水に分散する形で皮脂が皮膚から剥がれ落ちていきます。
ここで水温を上げると、水と油の粘性が下がるため、より皮脂が落ちやすくなります。
ぬるま湯の方が望ましいが
水温を上げると多少は皮脂が落ちやすくなるため、水洗顔でもぬるま湯の方が望ましいと言えます。
ですが、水温を数℃上げたからと言って、皮脂が劇的に落ちるようになるわけでもありません。
無理はしない
肌の汚れが酷かったり、脂性などの場合、ぬるま湯では汚れ落ちが悪くて物足りないかもしれません。
また、冬場はぬるま湯だと冷たく感じて辛いものです。
水洗顔は肌への負担が軽いので、あまり無理してぬるま湯にこだわる必要はありません。
洗い方に気を付ければ、自分が気持ちいいと思う水温で洗顔しても問題ないでしょう。
ゴシゴシ擦ったり、時間をかけ過ぎたりしない
皮脂や角質細胞間脂質の落ち方は、「洗い方」や「洗う時間の長さ」でも違ってきます。
しっかりゴシゴシ擦ったり、長い時間をかけて洗えば、それだけ肌へのダメージは大きくなり、脂質も落ちやすくなります。
洗いすぎれば、水洗顔でも角質細胞間脂質にまでダメージを与えることがあります。
水温よりも「洗い方」や「洗う時間の長さ」を気を付けた方がいいぐらいです。
そのため必ずしも、ぬるま湯を使えばOKというわけではありませんし、温かいお湯がNGというわけでもありません。
肌の状態や肌質、気温や湿度などに合わせて水温を調整するようにしましょう。
洗い方にもよりますが、水洗顔は皮脂をある程度残しながら肌を洗うことが可能です。
保湿が大事
洗顔後は肌が乾燥しやすい状態ですので、どちらにしても保湿することが大事です。
特に泡洗顔の場合、皮脂はほとんど落ちていますのでしっかり保湿しましょう。
まとめ
- 泡洗顔は皮脂よりも角質細胞間脂質が落ちないかを心配すべき
- 泡洗顔はぬるま湯の方がいい
- 水洗顔もぬるま湯が望ましいが、好みの水温でも大丈夫
- 水洗顔は皮脂をある程度残しながら肌を洗うことが可能
- 水温よりも「洗い方」や「洗う時間の長さ」に注意
- どちらにしても洗顔後は保湿が大事
参考文献
「皮脂」
北村 謙始
日本化粧品技術者会
https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/1364
(参照日2022-10-19)
「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」
芋川 玄爾
花王基礎科学研究所
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/44/10/44_10_751/_pdf
(参照日2022-10-19)
「子どものスキンケア-石けんで洗うことは本当に必要か?」
草刈 章
埼玉県医師会誌 790号
http://www.kusakari-shounika.or.jp/library/57b57ffcd8f117112ca60ac2/57ff0b6fe71aade02a6fdafc.pdf
(参照日2022-10-19)
コメント